場内 仲卸の「店舗替え」
場内に入ると上の写真の様な案内看板を見かけられることでしょう。
以前、4年に一度の「仲卸 店舗替え」という仲卸の一大行事が行われておりました。
昔は、買出しが基本でしたので、動線により、売上がとても変っておりました。
抽選で新店舗が決定するのですから、どこの店舗でも 「フリーのお客さんが通る動線の角店」 に当たるようにと願掛けまでしていたそうです。
規模が大きく扇型をしている築地市場なので、公平性を期すためにこのような事をしていたのでしょう。
だいたい5月のゴールデンウィークに行われ、それはそれは大変な行事でした。
なにしろ、3日間で全店舗が引越して、その翌日からは平常業務が始まるのですから、当の仲卸の人たちは勿論、引越業者(当時は日通がメイン)、大工、冷蔵庫屋、電気屋、電話屋、看板屋、食堂、弁当屋、清掃業者、廃棄業者等々、さまざまな業者がめまぐるしくこの一大行事をこなしていたわけです。
勿論、費用も半端ではありません。扱う魚種により、マグロ屋は冷凍庫(通称、ダンべ)も移動しなければなりませんし、シャッターを付けている所はそれも撤去、水槽に活魚を入れている所も移動です。設備が充実している所ほど大変だったことでしょう。
今でも店舗の会計をする所謂「帳場」(通称:チョウバコ)が小さいのも、引越の手間を少しでも省く先人の知恵の名残りなのでしょう。
想像するだけでも凄いことが行われておりました。
うちの店では、新店舗案内の「ビラ」(ポスター)を書いておりました。
まだ場内の新しい案内看板だけでは顧客に周知されないので、よりよく目立つように正面の手書き看板の横に貼り出す訳です。
新しい店舗番号と屋号を書き、好みに応じて紙の色も何色か用意して対応しておりました。正面の看板書きが間に合わない所もありましたので、紙を貼り合わせて大きく書いてもおりました。
引越が終わると、ビラを貼ってから仲卸さんたちが帰るのでこちらも大変でした。なにしろ墨で書くので次々に仕上げたビラをドライヤーで乾かし、丸めて包装。食事の暇もありませんでした。顧客は疲れていて、早く帰りたいわけですから待たせる訳にはいきません。
今では考えられない様な事ですが、こんな事も魚河岸の歴史になってゆくことでしょう。
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